こんにちは!モウタです。
今回はスリランカの情勢についてみていきます。
スリランカといえばどんなイメージをお持ちですか?
お茶の生産地や仏教国ということは有名ですね。
最近では中国の経済圏構想「一帯一路」で「債務の罠」に陥りスリランカ第3の港であるハンバントタ港を99年間貸し出すことになってしまいました。
そして現在は親中派のラジャパクサ氏が大統領に当選しました。
これからのスリランカはどんな国になってしまうのでしょうか?
最近、親中派の国がすごいペースで増えてきましたね。
GDPでアメリカに次ぐ第2位の経済大国になった中国が世界各地で影響を広げています。
その最たる例であるスリランカの情勢を分かりやすく説明していきます。
スリランカ内戦
現代のスリランカを語るうえで、外せないのがスリランカ内戦です。
ここから説明していきます。
スリランカ内戦は1983年から2009年にかけて展開された、スリランカ政府とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)による内戦です。
スリランカでは総人口のうち7割を多数派民族であるシンハラ人が、2割弱をタミル人が占めています。
そのタミル人は主に、島の北部と東部を中心に居住していました。
両者は古代より混住してきました。
しかし、イギリス植民地時代にタミル人を重用する分割統治政策がとられたことと、独立後にその反動として、1956年のシンハラ語公用化をはじめとするシンハラ人優遇政策がとられたことにより、民族間の対立が高まっていました。
LTTEの設立
民族対立が深まる中1972年には、ヴィエルピライ・プラバカランにより武力によってスリランカからの分離独立を目指す、「タミルの新しいトラ(TNT)」が結成されます。
TNTは1975年に、北部ジャフナの市長を暗殺するなどテロ活動を続け、同年TNTを母体に「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」を結成します。
スリランカ内戦
1983年ジャフナ近郊のティンネウェリで、LTTEが政府軍を襲撃し13名を殺害します。
これに対して、コロンボでは、反タミル人暴動が勃発しシンハラ人によるタミル人への虐殺行為が、市内各地で頻発します。
これをきっかけに各地でスリランカ内戦が始まることになります。
1985年にインドの仲介で、ブータンの首都ティンプーで和平交渉をはじめます。
1987年にはインドの平和維持軍の派遣が行われます。
当初インドは中立的な立場でしたが、武装解除をめぐりLTTEと対立し交戦状態になりました。
これは第1次イーラム戦争と呼ばれます。
この紛争は和平交渉などを挟み、第4次イーラム戦争まで続きます。
2009年にLTTEの最高指導者ヴィエルピライ・プラバカランの死が明らかになり、その当時の大統領ラジャパクサ大統領によって内戦の終結が宣言されます。
スリランカ内戦後
内戦により28万人のタミール人が、国内避難民となっており、終戦後は帰還が進んでいます。
2010年には戦場となった北部州で、GDPの成長率が22.9%という高い成長を記録し、スリランカ全体でも6~8%台の経済成長が続くなど復興が進んでいます。
2013年には95%の地域で地雷の撤去も完了しています。

債務の罠
「債務の罠」という言葉を世界に広げたのが、中国のスリランカ南部の港であるハンバントタ港についての件でしょう。
スリランカ政府が、中国からの融資を受けて建設した港湾の運営が赤字続きになりました。
その上、スリランカ政府がその融資への返済能力がなく返済資金の代わりに、2017年末、中国国営企業に運営権を明け渡すことになりました。
つまり手荒い言い方をすると、中国はスリランカからハンバントタ港を99年間の租借する権利を持つことになりました。
これ以前、当時のスリランカは2009年の内戦終結前後から、中国との関係強化を進めていました。
スリランカは内戦を完全に終わらせるために、内戦終結後の戦後復興を進めるための資金を必要としていました。
つまり、当初は国内的な事情があり、積極的に中国の関与を求めていました。
スリランカが島国であり、中国の活動が周辺諸国から危険視され牽制されることが少なかったことも、中国の関与が大規模に及んだ一因となっています。
現在では戦略的な重要性から、スリランカに対する中国の活動に、インドやアメリカが目を光らせています。
しかし中国とスリランカの関係が深まり始めたころは、「一帯一路」という言葉も一般的ではなく、インドもさほど警戒していませんでした。
スリランカがインド洋の要衝といわれるようになったのは、多くの国の船やタンカーがスリランカの南側を通過していることがわかったからです。
その数は年間6万隻ともいわれています。
そして、まさにスリランカの南端にハンバントタ港が位置し、中国がそこを押さえていることになってしまいました。
そのラジャパクサ大統領は、ハンバントタ港の軍事化はないと、火消しに躍起になっていました。
その状況を打開しようとしたその次の政権のシリセーナ大統領も、結局は中国との関係を重視せざるを得なくなっています。

債務の罠の実情
債務の罠に落ちたスリランカ情勢ですが、その実情をみていきましょう。
スリランカのGDP(2017年)は約871憶ドルです。
それに対して政府の対外債務は310億ドルです。
ちなみにスリランカが、2008年から2018年までに中国から借り入れたのは、72億ドルです。
これがなぜスリランカは返せないのでしょうか?
1つは、中国の融資の条件が他の国や機関より厳しいためです。
金利が2%のものもあれば6%と非常に高いものがあります。
据え置き期間も短いです。
2つめは、融資を受けて作られたインフラが、採算が取れていない点です。
つまり、無駄なインフラが多いということです。
利益を生んでいるものもありますが、惨憺たるありさまのインフラが多いです。
これらインフラの操業における利益を返済にあてることが全くできないどころか、一部の利益を上げているインフラの稼ぎで、赤字を補填している状態だったのです。
スリランカは、中国側に返済の猶予を打診しましたが、中国はそれをはねつけています。
ラジャパクサ大統領は、中国からの資金を元手にしたインフラ開発をすすめ、好景気を下支えしました。
一方でシリセーナ大統領は、バランス外交をスローガンに前政権との違いを明確にしようとしましたが、頓挫してしまいました。
おカネがなくなったからです。
そのためか、2017年の経済成長率は3.1%で南アジア諸国の中でも最低となっています。

スリランカでの対中感情は?
スリランカでは現在、中国学習熱が高まって孔子学院も有力な大学に設立されています。
現地のエリート学校では、中学生にもプログラミングに加え中国語を教えています。
また学校教育における「一帯一路」に関するイベントも年々増えています。
外国人観光客も、中国人観光客がインドに続いて2番目に多いです。
それでも国民間のトラブルは今のところはないそうです。
しかし、今後ツアー以外で訪れる中国人や定着する中国人が増えると、摩擦も生じるでしょう。
スリランカ情勢のまとめ
上記したように、現在のスリランカは中国と切っても切れない関係にあるといえます。
スリランカの情勢は、はっきりいって中国の植民地下にあるといえますが国民感情としては嫌中派は少ないといえるでしょう。
2019年11月に行われた大統領選では、マヒンダ・ラジャパクサ前大統領の弟である、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が誕生しました。
そして、ゴタバヤ氏の兄2人が主要閣僚ポストを独占しており、中国依存に加えて「一族支配」をするかまえをみせています。
前回のマヒンダ氏のころと、全く同じ展開になりつつあります。
ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領を選んだのはスリランカ国民です。
親中政策をとることを望んで投票したのでしょう。
「債務の罠」といわれながらも、もはや政治家だけでなく、国民も中国からの投資や資金で開発されることでしか、生きていけないと理解しているのでしょう。
中国はスリランカだけでなく、世界中で「債務の罠」の連鎖を引き起こしていす。
このままでは、中国なくして生きていけない国がたくさん出てくるでしょう。
覇権を争っているアメリカだけでなく、日本にとっても頭の痛い問題です。
